W〜翡翠の欠片〜
>喧騒は騒々しさを呼び、更なる騒動を呼ぶ。終焉には何がいるのか?
窓の外をもう何度見ただろうか。挙動不審だと思われても仕方ない。
とはいえ増長天という名前のガタイのいい男は、真面目に掃除をしていて気付いていないようだ…。
「こひめ殿!」
「は、はい?!」
「助かりますなぁ。この城は広くてなかなか手入れも行き届きにくく、どうしたものかと思っておった所でしてな!」
「まぁ、こっちも仕事ですから…」
「ついでに中庭の方もよろしいですかな?」
「あー大丈夫です!はい!」
バレたかと思った。心臓に悪い。
しかし向日葵一号がどうのこうのと言いながら外に向かう増長天に、キョウタとはまた違うやり切れない感が湧いてくる。
「こひめ様」
歩き出したと同時に今度は持国天に呼び止められた。背後にいるのは分かる。が、振り向く勇気はない。
「な…なんすか」
「帝釈天様は何処ですか?」
キョウタはどうして一緒じゃないんだ?!俺じゃ持国天の相手は無理だぞ!
「――それは、その」
「俺ならここだ」
救世主の声だ。まさに神の声!思わず振り向けば、帝釈天の姿。
「ご苦労だったな、何でも屋」
「いやいやお役に立ててよかった!です!」
よく見たらキョウタは帝釈天の後ろからピースしている。感謝すべきか文句付けるべきか迷うな…。
「さて仕事は終わりだ。報酬の話だが」
「待ってました♪」
「次の仕事場までの輸送でどうだ?」
「初めの依頼をねじ曲げた俺達に否定する資格はねぇよ」
「うん、そだね」
俺は持っていた最後の手紙の送り元を帝釈天に見せる。帝釈天は手をかざす。
「達者でな」
空気が渦巻いて風景が吹き飛んでいく。返そうとした言葉は風にさらわれ、ついには何処かへ行ってしまった。
遙か果てに終わりが微かに見えた気がする。幻覚にでも手を伸ばそう。