※このお話はmoon star and windの龍白さん作創造小説3本と《C・L》とのコラボ小説です※
CLATTER・VCATIONS
T〜事の始まり〜
ここは一般人と非常識人の何でも屋。その平凡とは程遠い日常に3通のさらにとんでもない騒動が舞い込んだ。
「キョウタ」
「なーにコヒメ」
「手紙来てる。仕事の話じゃね?」
3通の手紙をキョウタに差し出す。宛名は俺ではないものが書かれているので未開封のまま。
「開けていいよ。コヒメが中身確認して」
「了解ー」
俺は机の上のペーパーナイフを使い封筒を3通とも開けようとしたとき、あることに気付いた。
「ちょい待て、これ送り主の住所…全部国が違う…」
「ウソだぁ」
「嘘じゃねぇよ!見てみろって!!」
持っている封筒をキョウタの顔の前に突き出す。キョウタは俺の手から受け取らずそのまま眺めている。
「えーとコレは…イギリス?こっちはベーダ界、て読むのかな。でコレが?…へ、り、お、す…太陽(ヘリオス)?」
聞き慣れない国名や場所らしき言葉が並び疑問ばかりが大きくなる。裏側を見てまたしても1つ謎を発見。
「よく見りゃどれも切手貼ってないし!どうやって届いたんだ?!」
全ての手紙は切手がなければ郵便屋に届けてもらうことは出来ない。だとすると…。
「郵便屋さん以外の“何か”が届けたんでしょ」
……すぐにそんな考えが出てくるあいつの頭の中を一度覗いてみたいもんだ。どうなっているか想像すらつかない。
まぁ、ひとまずそれは置いといて。
「とにかくだ!手紙の中身を読まないと何も始まらねぇ!」
「なになに…“キャントと言う女性の料理が最凶の味と見た目なので料理の仕方を教えてあげて下さい。”だってさー」
謎解明のためやる気を出してみたら、いつの間にか俺の手から《送り主イギリス》の手紙が消えていた。
ついでにその中身らしき文章を読み上げる声が聞こえてきた。
「え、ちょ、もう開けて読んでんのか!?俺の気合い返せ!!」
「ん?まだなんか封筒に入ってる」
「無視か!俺は無視なのか!?」
「ならコレはコヒメが見てよ」
手紙を引き抜いた封筒を放り投げられ、慌てて手を伸ばし受け取る。中からカチャリと紙以外の音がした。
逆さにするとガラス細工と思われるペンダントが現れる。
あまり厚みのない円形で二重丸の模様がとても美しい。外は銀色、中は黒色。
「わあ、綺麗だねそれ!」
「もう1枚手紙入ってんな。“同封したペンダントを手に持って、目を閉じ私の名前を心の中で呼んでください。私の名はファル・ノビルニオです”…?どういうことだ??」
キョウタがペンダントのチェーンを持ち上げてゆっくり手のひらに乗せる。
「やってみればきっと分かるよ!」
「お前…怪しいとか思わないんだな」
「は〜いはい、いいから手乗せて〜」
断固譲らない気らしい。渋々右手をそれに重ねてみる。
「ほら。これでいいのか?」
「あとは名前を呼ぶんだっけ」
目を閉じるついでに思考を巡らせる。手紙に書かれた名前“ファル・ノビルニオ”はいったい何者なのか。
――ト―――タ――
何か聞こえる…?
「キョウタ今何か言ったか」
「…コヒメが言ったんじゃないの?」
―ヤット、キタ――
頭に声が直接響く。誰だ。何をしている。
[ソノママ目ヲ閉ジテイテ下サイ]
更にはっきり声が響いてくる。もしかしたらあんたがファル・ノビルニオか?
[そう焦らなくてもすぐに分かりますよ]
その声の後、一瞬にして重力が消し飛ぶ。いきなり床が抜けたような感覚。目を開けていないのに周囲を包む白い光の輝きが眩しい。
――待った待った!今俺らに何が起きてんだっ??!!
「もう目を開けていいですよ」
どこかで聞いた声がする。あの謎の声と同じだ。
そっと目を開けて周りを見渡す。さっきまで部屋にいたのに、今は見たことのない景色が広がる。
「ようこそ。よく来てくださいました」
景色の中に黒服金髪の人物がいる。その人の声はさっきから何度も聞いているものと同じ。
さぁ、ここから《騒々しい仕事》の幕開けだ。