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朝、目覚める、布団から、起きて、そして―――第一声。
「………―――しまった」
コヨーテ一派の危機
例えば風呂上がりに身体を乾かさずに布団に入ったとか。
例えば寝ているとき布団を蹴散らし腹を出して寝ていたとか。
そんな馬鹿はしていないし、たとえ知らぬ間にしていたとしてもその程度の事で“こんな風”にはならない。
獣はどこぞの世界に住む人間とやらに比べれば大層丈夫だから。
「疲れ、ストレス……思い当たる節がありすぎるな……」
起き上がらせた身体を力無く布団にうずめながら、コヨーテは忌ま忌ましげに小さく呟いた。目覚めて早々、寒気がする癖に顔は熱く、頭痛、吐き気、目眩に襲われ終いには立ち上がれないと来た。
重度の風邪である。
風邪は万病の元と言うため決して軽視は出来ないが、市販の薬飲んで寝ていれば十分回復するのもまた事実である。しかし、いかんせん今日は悠長に寝ている訳にもいかないのだ。
「任務……あいつらに任せたら色々終わる……」
今日やる任務はある犯罪組織の殲滅と、そこで行われた実験を記録したディスクの情報解析。部下は皆卓越した戦闘技術を持っているため特に今回の任務には打ってつであり、リーダーであるコヨーテがいなくとも難無く任務を熟すだけの力はある。だが彼らには欠けているモノがあるのだ。
常識と空気を知らなかったり
果てしなく腹が黒かったり
存在感が薄すぎたり
まるで強さと引き換えにでもしたかのように何処かが普通の者と違う。それは部下らに限らずコヨーテにも当て嵌まる事なのだが、どうしたものか、部下の中で一番の戦力を誇る者が一番外れている。実例を上げるなら内乱に紛れターゲットを抹殺せよ、との命令を下すとそのターゲットのいた街と隣街辺りを共に地図から消してしまった事があるのだ。
殲滅を主に置く今日の任務でその部下の戦力を使わない手はないが、歯止めがいなくてはならない。言ってしまえば彼は鞘のない刀のようなモノ。それもただの刀ではない、自分で勝手に動く妖刀だ。刀が関係のない者を切らぬようにするには鞘が必要で、その鞘は紛れも無くコヨーテである。
任務に向かわせる部下は彼の他に二名いるが、彼らが刀の鞘になれるかどうかは怪しい。
結局の所、部下だけで任務に行かせると今日片付ける任務以上の雑務と精神的苦痛がツケとして回ってくると言う事だ。
「あいつが無能でさえ無ければこんな苦労はないと言うのに…」
掠れた声で言いながらコヨーテは再び起き上がり、水と、睡眠薬の入ってない風邪薬を探しに立ち上がったのだった。
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